サイトトップ> 演奏会とCDレヴュー > 横山幸雄


Yokoyama Yukio


  Liszt:Etudes d'exécution transcendante - Yukio Yokoyama

【邦訳タイトル】リスト:超絶技巧練習曲集
【演奏者・録音】横山幸雄 1998年
【カタログ番号】SONY SRCR 2295(国内盤)  
 1. 超絶技巧練習曲1番「前奏曲」(リスト)
 2. 超絶技巧練習曲2番(リスト)
 3. 超絶技巧練習曲3番「風景」(リスト)
 4. 超絶技巧練習曲4番「マゼッパ」(リスト) 
 5. 超絶技巧練習曲5番「鬼火」(リスト) 
 6. 超絶技巧練習曲6番「幻影」(リスト)
 7. 超絶技巧練習曲7番「英雄」(リスト) 
 8. 超絶技巧練習曲8番「狩り」(リスト) 
 9. 超絶技巧練習曲9番「回想」(リスト) 
 10. 超絶技巧練習曲10番(リスト) 
 11. 超絶技巧練習曲11番「夕べの調べ」(リスト) 
 12. 超絶技巧練習曲12番「雪嵐」(リスト)


 日本人初の全曲録音にして、リスト協会グランプリ賞受賞の一枚。横山幸雄と言えば、全盛期ポリーニを凌ぐほどに均整の取れたショパンの演奏が思い浮かばれますが、この録音はそうしたショパンの演奏イメージから脱却し、超絶作品の由緒や、リストの風格を鮮烈に想起させるような開放感に満ちた録音です。2、5、8、10、12番にみられるようなスマートな歌い口と滑らかなメカニックは、「美しい」の一言です。特に重音でひしめく鬼火は限界を超えたようなテンポと抜群に抑制された音列に聴き惚れてしまいます。理性的な響きを犠牲にすることなく、余裕すら感じさせる指回りと豪速の展開に、そこら中に溢れかえるよじれた超絶技巧の解釈を一網打尽にするような勢いを感じます。ここまで真正面からリストに挑む日本人演奏家は、そうそう見当たりません。
 本人はこの録音に対して「会心の作ではない」というようなコメントを残していましたが、確かにマゼッパなどに焦点を絞れば、残響のない、えぐるような音色という点でもう一声欲しいところではあります。また、L..ベルマンのような強かな演奏との比較ともなると、全体的にスマートすぎるきらいはあるかもしれません。技術的困難を感じさせない原理的な美しさを体現している意味では、恐らくアムランのようなピアニストが手がける場合に酷似するのでしょう。

 




Copyright 2006 LISZT-STYLE