Sonatas & Etudes Chopin Scriabin Liszt Ligeti
【邦訳タイトル】ソナタ&エチュード集
【演奏者・録音】ユジャ・ワン 2008年
【カタログ番号】Grammophon UCCG-1460(国内盤)
1-4. ソナタ2番(ショパン)
5. 練習曲4番「ファンファーレ」(リゲティ)
6-7. ソナタ2番「幻想」(スクリャービン)
8. 練習曲10番「魔法使いの弟子」(リゲティ)
9-11. ソナタ ロ短調(リスト)
12. トルコ行進曲(モーツァルト=ヴォロドス)※国内版限定ボーナストラック)

ショパンのソナタ2番。特に1楽章はまるでポゴレリチを意識しているような軽やかなステップを見せる冒頭ですが、呼吸や反復走句のアクセントが不自然です。また、左手のメカニックと表現に自信があるようで、右手主旋律がことあるごとに伴奏部に強襲されます。2楽章の主旋律も、冒頭からいきなり肩身が狭そうです。プロが真摯に趣味の域に走った演奏ということであれば完成度は高いのかもしれませんが、全体として統合的なイメージやニュアンスを汲み取りづらい不気味な仕上がりです。微温的な奏法に終始しているリゲティの練習曲は、「アパシー」に浸食される現代的な頽廃、あるいは、単なる音の実験や遊戯という意味合いが強くなります。なんとなく発展の可能性が感じられない不幸な組み合わせです。スクリャービンの幻想ソナタでも確かな技量を感じさせつつ、すぐにフェードアウトして綺麗にまとめようとする方法論に固執しすぎているように思います。リストのロ短調ソナタにおいてようやく健全な解釈を堪能することができます。じっとしていても湯気が立ちそうな左手の能力を存分に活かしきれる対位的な主題循環の基調が合うようです。ヴォロドス編のトルコ行進曲は本家を凌駕するテンポにお得意の左手によるオクターブのキレ。単純な意味で超絶技巧は底が見えません。
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