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Rian de Waal


  ROMANTIC TRANSCRIPTIONS - Rian De Waal

【邦訳タイトル】ロマンティックトランスクリプションズ
【演奏者・録音】リアン・デ・ワール 1984年
【カタログ番号】ETCETERA KTC 1016(輸入盤) 
 1.プレリュードとフーガ S.462(バッハ=リスト)
 2. 献呈(シューマン=リスト)
 3. 6つのポーランドの歌5番 私の愛しい人(ショパン=リスト)
 4. パガニーニ大練習曲3番「ラ・カンパネラ」(リスト)
 5. 幽霊船 Op.1a(タウジッヒ)
 6. ひばり(グリンカ=バラキレフ)
 7. 「芸術家の生涯」の交響的変容(J.シュトラウス=ゴドフスキ)


 ジャケットは若かりしスタローンを思い起こすような風貌です。83年エリザベート王妃国際コンクール7位入賞でブレイクし(!)、世界を股に掛けた活動を始めたワール。均質なタッチとテンポ、叙情性豊かなベルカントを持つピアニストです。
 プレリュードとフーガは右手の旋律一音一音の響きが豊潤で、左手オクターブの重量も安定しています。献呈、私の愛しい人も可憐で美しいデュナーミクが魅力的です。フォルテの打鍵時に常に肩に力が入っているというか、瞬発力で流して弾くようなことはしないので、多少強音が生真面目に聴こえるということがあります。ラ・カンパネラではそれがマイナス要因として働いていますが、珍曲中の珍曲であるタウジッヒの幽霊船は、奏者の特質が作曲家の頑健な奏法イメージにピタリと当てはまります。芸術家の生涯も91年のハイペリオン盤と比べると音が硬く、加えて細やかな音型が入り組むメロディアスな部分でのポリフォニーがやや雑然としています。ただ、それでもオクターブ移動は隅々までコントロールが行き渡っており、場当たり的な超絶技巧の名手とのスタンスの違いを見せ付けてきます。課題は抱えつつも、奏者の巨大な力量を物語るには十分な一枚です。

 




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