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Jean-Yves Thibaudet


  Liszt : Opera transcriptions - Jean-Yves Thibaudet

【邦訳タイトル】リスト:オペラ・トランスクリプション集
【演奏者・録音】ジャン=イヴ・ティボーデ 1992年
【カタログ番号】LONDON POCL-1359(国内盤)
 1. 「リゴレット」より演奏会用パラフレーズ S.434(ヴェルディ=リスト)
 2. 「ルチア」と「パリジーナ」の主題による演奏会用ワルツ S.214-3(ドニゼッティ=リスト)
 3. 「ファウスト」のワルツ S.407(グノー=リスト)
 4. 「エフゲニー・オネーギン」よりポロネーズ S.429(チャイコフスキー=リスト)
 5. 「さまよえるオランダ人」より紡ぎ歌 S.440(ワーグナー=リスト)
 6. 「タンホイザー」より叙唱とロマンス 「おお、我が優しき夕星よ」 S.444(ワーグナー=リスト)
 7. 「ローエングリン」よりローエングリンのエルザへの叱責 S.446-2b(ワーグナー=リスト)
 8. 「トリスタンとイゾルデ」よりイゾルデの愛の死 S.447(ワーグナー=リスト)
 9. 「フィガロの結婚」より2つの動機による幻想曲 (S.697)(モーツァルト=リスト=ブゾーニ)


 ウリは光沢のある軽やかなタッチ。スタッカート、ノンペダルでのレガートで徹底的に攻勢をかけます。離鍵が素早く、回転率の良い引き締まった響きは奏者の繊細な感性そのもの。オネーギンのポロネーズイゾルデ愛の死、さまよえるオランダ人の紡ぎ歌は割と知られていますが、ルチアとパリジーナの演奏会用ワルツ、ローエングリンのエルザへの叱責など、滅多なことでは演奏されない曲も積極的に取り込んでいます。何より嬉しいのが、一つ一つの完成度が高く、メカニック、解釈面どれを取っても押しなべて模範的であることです。軽妙なパッセージでは敏捷な離鍵を前提としつつ、重厚感を前面に出すフレーズの演出力に関しては、恐らく随一の実力者でしょう。フォルティシモへの豪快なダッシュ、伸びやかな歌いまわしなど、表現の自由度が魅力です。リゴレットのパラフレーズファウストのワルツ、これらはDENON盤に聞き劣りします。特にファウストのワルツは最終部で「弾き直し」をしていて、あまり違和感がないということでそのまま通してしまったのかもしれませんが、スタジオ録音としては極めて珍しいです。フィガロの結婚も多少手に余る部分があるようですが、それでも軽々と水準を超えてきます。ティボーデの手にかかると、いずれの曲もパリっと都会的で洗練されたイメージへと広がっていきます。稀有なピアニストです。

 




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