Daria Telizyn plays Liszt
【邦訳タイトル】ダリア・テリジン・プレイズ・リスト
【演奏者・録音】ダリア・テリジン 1987年
【カタログ番号】CLAUDIA CR3705-2(輸入盤)
1. ソナタ ロ短調(リスト)
2. 3つの演奏会用練習曲1番 悲しみ(リスト)
3. 3つの演奏会用練習曲2番 軽やかさ(リスト)

リズム感が全くつかめないほどにフラつく千鳥足のフレージングは完全に意図不明です。濁さずいえば「駄演の標本」。ぎこちないテンポチェンジが悉く宙に浮いていて、よりどころがありません。アッチェレランドやリテヌートは個人の好みといえども、あらゆるプロの録音でここまで強弱や拍を無視しているピアノ演奏に出会ったことがありません。指周りも劣悪で、高速パッセージでの快速感はゼロです。そもそも定速を維持する能力があるのかも怪しいかもしれません。テンポが緩くても粒がバラけ、ポリフォニーの工夫も並み以下。もたつく和音連打、節操なく小節をはみ出す妙なテヌートの悪癖が体に染み付いているようです。音色表現も特筆するような点はなく、単純にミスタッチが少ないというだけでプロになれたのか?という印象。特にソナタは弛緩部分でテンポと音量を絞りすぎる点、各カデンツァ、コーダでの両手の不揃いが原因で輪郭が引き締まりません。もちろん全体を通した統一感は無きに等しく、34分かけて聴くには苦痛が伴います。悲しみも過剰な歌いこみで間伸びしており、立体感が損なわれています。6分近い軽やかさは秒数に違わないメカニック基盤の悪さで、主体性がありません。
いずれも誰がどの部分を評価して録音に至ったのか私には皆目検討がつかないのですが、怖いもの見たさで試してみるのは面白いかもしれません。
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