Leo Sirota ・ tokyo farewell recital
【邦訳タイトル】東京告別リサイタル
【演奏者・録音】レオ・シロタ 1955年
【カタログ番号】ARBITER ARB 123(輸入盤)
1. パストラーレ ホ短調(スカルラッティ=タウジッヒ)シロタ1955
2. カプリッチョ ホ長調(スカルラッティ=タウジッヒ)シロタ1955
3-6. ソナタ18番 1~4楽章(ベートーヴェン)シロタ1955
7-10. ソナタ14番 1~4楽章(シューベルト)シロタ1955
11. 巡礼の年第2年1番 婚礼(リスト)シロタ1955
12. 「ドン・ジョヴァンニ」の回想 S.418(モーツァルト=リスト)シロタ1955
13. シロタの肉声インタビュー シロタ1960

山本尚志著、『日本を愛したユダヤ人ピアニスト』の題材となったシロタは、日本でのクラシック伝導に大きな貢献を果たした偉大な人物です。ブゾーニの高弟であり、かの園田高弘氏も師事。しかし、当盤は往年に語られた強靭なテクニックは影をひそめているので、期待を裏切られる可能性が大きいでしょう。
語り口は流暢です。前半のベートーヴェンやシューベルトの弛緩楽章では湧き上がるクレシェンドやスモークのかかるデクレシェンドが軽妙です。ペダルは薄めで粒に躍動感があり、音も柔らかくて体温が感じられます。音の絞り方はツボをしっかり押さえてあり、スケール観は小さくないです。 しかし、問題はポリフォニー部分。途端にミスタッチが劇的に増え、正確性がガクッと落ちてしまいます。そればかりか、そうしたミスを隠すための重圧低音によって全体が乱雑になります。婚礼における主題前の指のもつれも気になりますが、最高に出来が悪いのはやはり鬼門のドンジョヴァンニの回想。今まで聞いたプロの録音ではワーストでしょうか。3度進行は見事に崩壊し、オクターブは安全運転を極めてもなお不正確。単純に当作品がいかに技術的に困難なのかを物語る結果となっています。一般的にどのように評価されているのかはわかりませんが、少なくともリストを期待して聞く盤ではありません。
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