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Abbey Simon


  The piano virtuoso transcriptions by liszt, rachmaninoff, godowsky, chasins

【邦訳タイトル】ピアノ・ヴィルトオーゾ
【演奏者・録音】アビー・サイモン 1980年
【カタログ番号】VOX ACD 8204(輸入盤)
 1. 「こうもり」の主題による交響的変容(J.シュトラウス=ゴドフスキ)
 2. トゥリアーナ(アルベニス=ゴドフスキ)
 3. 愛の悲しみ(クライスラー=ラフマニノフ)
 4. 愛の喜び(クライスラー=ラフマニノフ)
 5. 「ドン・ジョヴァンニ」の回想(モーツァルト=リスト)
 6. 「真夏の夜の夢」よりスケルツォ(メンデルスゾーン=ラフマニノフ)
 7. 「ソロチンスクの市」よりゴパック(リムスキー・コルサコフ=ラフマニノフ)
 8. 熊蜂の飛行(リムスキー・コルサコフ=ラフマニノフ)
 9. メロディ~「オルフェオとエウリディーチェ」から「妖精の踊り」(グルック=チェイシンズ)


 サイモンは古い世代のピアノファンにショパン弾きとしてよく知られた存在ですが、当盤は奏者のトータルパフォーマンスを堪能できるトランスクリプション集です。
 あらゆる超絶作品の芸術性の高さを強く訴えかけます。落ち着いたテンポを維持し、ルバートを利かせてモッチリとした歌い方をする点はワイルドやボレットのエレガントな音作りを彷彿とさせます。(サイモンはボレットと同じくデヴィット・サパートンに師事しています)ピアノを弾くものにとって「思わず私もそのように弾いてみたくなる」上手さと、「ウットリと聞き手に回っていたい」と思わせる2種類の上手さがあるとすれば、確実に後者にあたります。ピアノという楽器を熟知した鳴らし方においては、それこそボレットには及びませんが、気品のある和声のキャッチ、フレーズを見返るさりげない表情の機微、デッドゾーンのない配色感なども秀逸です。「こうもり」の変容愛の喜びは一見自由に泳がせながら、最終的には幹に帰るように展開されていくような音の絡まり方が巧みです。反面、後半部の真夏の世の夢のようなリズム振幅に限りのある作品や、瞬発力が求められるゴパックなどは、やや勢いなく感じられます。チェイシング編曲のメロディはラインのつなげ方、決め細やかな音量バランスが注目どころです。

 




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