The World of Franz Liszt - Naoki Sekino
【邦訳タイトル】フランツ・リストの世界
【演奏者・録音】関野直樹 2007年
【カタログ番号】 Pro Arte Musicae PAMP-1033(国内盤)
1. ソナタ ロ短調(リスト)
2. 白鳥の歌 S.560-7 セレナード(シューベルト=リスト)
3. 愛の夢3番(リスト)
4. 死の舞踏 S.525(リスト)
5. パガニーニ大練習曲3番「ラ・カンパネラ」(リスト)

先ごろゲキチとのコラボレーションで話題を呼んだピアニスト。本作は全面的にリストを取り上げ、ソナタに加えてリストオリジナルの死の舞踏(独奏版)を取り上げる意欲的なデビューアルバムです。
ロ短調ソナタは大曲らしい威厳に満ちています。アクセントやペダリングは緻密な計算を思わせるもので、音楽的な濃淡もスマートに表現されています。惜しむらくは分離の悪さ、バラつきを見せる左手の高速音型と、平坦なカンタンド・エスプレシーヴォ。セレナードや愛の夢3番も趣味良くまとめられており、時間をかけた緩やかなクレシェンドの上手さは際立っています。死の舞踏S.525は冒頭にある難度の高い和音昇降部が若干怪しいですが、震える低音と和声感に溢れた旋律部は迫力十分です。また、余計な残響を残さない各パッセージの切り替えが秀逸で、過剰なテンポや鋭敏なスタッカートだけでは再現できない熟達したキレを感じます。やはりラ・カンパネラのような瞬発的で繊細な音型で構成されている作品は不得手なようで、アゴーギクでのリスクヘッジが顕わになっていますが、常に見通しの利いた流れとバランスという点で関心を引く一枚です。
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