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Sato Mika


  Liszt:Virtuosity of Opera Paraphrases - Mika Sato

【邦訳タイトル】リスト:ヴィルトゥオージティ・オブ・オペラ・パラフレーズ
【演奏者・録音】佐藤美香 2006年
【カタログ番号】カメラータ・トウキョウ CMCD-28130(国内盤)
 1. 「ドン・ジョヴァンニ」の回想 S.418(モーツァルト=リスト)
 2. 「リゴレット」より演奏会用パラフレーズ S.434(ヴェルディ=リスト)
 3. 「トリスタンとイゾルデ」よりイゾルデの愛の死 S.447(ワーグナー=リスト)
 4-8. ソナタ ロ短調(リスト)


 今や日本人の女性も重量作品の録音をこなす時代。特にショパンの演奏で定評のあるピアニストが、このアルバムのようなプログラムを展開する意義は高いと言えます。
 ドンジョヴァンニの回想は、3度の処理が馴染まないようです。しかし、精密なパッセージの音量を瞬時に絞りこむ妙技がハマっており、音が混濁してぶつかりやすいパッセージ同士の遠近感がしっかりついています。スタッカートによる軽妙なノリも魅力的です。リゴレットパラフレーズは浪費的なオクターブ奏法とは全く違った趣きがあり、一つ一つのメロディラインの響きが充実しています。また、繰り返しのフレーズへの変化など基本に忠実で、ピアノ学習者にお勧めの模範的演奏です。イゾルデの愛の死は曲想が曲想だけに、展開に応じてもう少しずつ不器用かつ執拗な表現があってもいいかもしれません。ロ短調ソナタは奏者の高い読譜力を証明。通常はあまり気配りされないようなクレシェンドやアクセントなども丹念に拾っています。全体的にテンポは決して速くないですが、コーダまで一貫して体感速度が計算されている印象です。
 音の伸びと張り、純度を意識したペダル、引き締まったスタッカートなど、言葉少なくして多くを語れるタイプとして実力を発揮した一枚です。

 




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