A NIGHT AT THE OPERA - Matti Raekallio 
【邦訳タイトル】オペラの夕べ
【演奏者・録音】マッティ・ラエカリオ 1993年
【カタログ番号】ONDINE ODE 834-2(輸入盤)
1. 「ドン・ジョヴァンニ」の回想(モーツァルト=リスト)
2. 「オルフェオとエウリディーチェ」より精霊の踊り(グルック=ケンプ)
3. ガヴォット(グルック=ブラームス)
4. 「フィガロの結婚」の主題による幻想曲(モーツァルト=リスト=ブゾーニ)
5. 「タンホイザー」より叙唱とロマンス「おお、我が優しき夕星よ」S.444(ワーグナー=リスト)
6. 「さまよえるオランダ人」より紡ぎ歌 S.440(ワーグナー=リスト)
7. 「ワルキューレの騎行」(ワーグナー=タウジッヒ)
8. トリスタンとイゾルデ」よりイゾルデ愛の死(ワーグナー=リスト)
9. ソナチネ6番「カルメンに基づく幻想曲」(ビゼー=ブゾーニ)
10. カルメン変奏曲(ビゼー=ホロヴィッツ))

豪胆なテンポで名高いラエカリオのオペラ編曲集。例のごとく高度な技巧が求められる部分は滑らかさが失われ、フレーズ間のつながりも希薄になりがちです。制御不能なテンポの一歩手前までアッチェレランドをかけ、技巧要素に挑戦的な態度を示すことで、どことなく不安定感を残します。ドンジョヴァンニやフィガロ幻想曲、における細部の処理は明らかに推敲の余地を残していて、お世辞にも趣味が良いとは言えませんが、カルメン幻想曲はブゾーニ特有の多重人格的な書法の軽味が出ていて非常に相性が良いように思われます。ピアノ編曲作品で最も俗悪な部類と言って差し支えないワルキューレの騎行は見事な敢闘ぶり。また、さまよえるオランダ人の紡ぎ歌も軽やかなタッチに繊細な色彩感が符合しています。精霊の踊り、イゾルデ愛の死などの緩やかな作品は、間延びのない展開と広いダイナミクスで臨場感のある官能美を演出しています。
男性的な野心に満ちた選曲と演奏に見られる目覚ましい推進力はそれだけで希少価値ですが、聴きこむには難点が多いでしょう。頭を空っぽにして気楽に聞き流すべき一枚です。
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