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Ivo Pogorelich


  Liszt:Sonata h-moll, Scriabin:Klaviersonate - Ivo Pogorelich 

【邦訳タイトル】リスト:ソナタロ短調、スクリャービン:ソナタ2番
【演奏者・録音】イーヴォ・ポゴレリチ 1990年
【カタログ番号】Grammophon POCG-1515(国内盤)

 1. ソナタ ロ短調(リスト)
 2-3. ソナタ2番「幻想ソナタ」(スクリャービン)


 ショパンコンクール落選をきっかけとし、異端児として有名になったポゴレリチ。自傷的な陰影を深く刻み込むような苦悶の演出が話題性を呼ぶようです。 
 ショパンコンクールのライヴ、スカルラッティ、ラヴェル、そして今回紹介する録音に至るまで、どれをとってもポゴレリチが特別な異彩を放っているように感じたことがありません。余計なたとえで言えば、広漠なピアノ・マトリクスにポゴレリチの居場所がないように思えてしまうのです。かの異端児扱いは、スケールよりも内省的なピアニズムを上位に置く矮小なピアノ観が幅を利かせるようになった現代を象徴しています。リストにしてもスクリャービンにしても、強烈な「ポゴレリチ臭」なるものがいったいどこにあるのか?心を抉るフォルティシモ、深海から顔をのぞかせるようなピアニシモ、あるいは、いかにも無作為の仮面を被った計算高いテンポチェンジなど、「歴史的な表現力の限界」にはほぼ間違いなく到達できません。むしろ、非凡なのは自身の統制欲を満たすメカニックの高さであり、応用力に優れたスタッカート奏法ではないでしょうか。評価のみがひどく個性的になり、相対的に実の演奏が低格なものに捉えられてしまう逆転現象が見られます。

 




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