Herbert du Plessis plays Liszt 
【邦訳タイトル】ヘルベルト・デュ・プレシス・プレイズ・リスト
【演奏者・録音】ヘルベルト・デュ・プレシス 1992年
【カタログ番号】PAVANE RECORDS ADW 7275(輸入盤)
1. 幻想曲とフーガ S.463(バッハ=リスト)
2. 冬の静かな炉端で~「マイスタージンガー」の歌より S.448(ワーグナー=リスト)
3. 固定楽想~アンダンテ・アモローゾ S.395(ベルリオーズ=リスト)
4. 「リゴレット」のパラフレーズ S.434(ヴェルディ=リスト)※
5. 「トロヴァトーレ」よりミゼレーレ S.433(ヴェルディ=リスト)
6. 「エルナーニ」による演奏会用パラフレーズ S.424(ヴェルディ=リスト)※
7. 「ノルマ」の回想 S.394(ベルリーニ=リスト)
※ 表記曲順誤植訂正

ヴェルディを中心にした、叙情的なリスト編曲作品選集です。エルナーニのパラフレーズはあのジョイス・ハットの演奏として盗用されたものです。
小さなミスを断続的に繰り返すものの、類まれなるアゴーギクのセンスに支えられ、見通しの良い構成の中に各フレーズがよく落ち着いています。かのアラウは音楽的成熟と引き換えに粒立ちの正確さを失っていきましたが、まさにその粒立ちを補完したような奏法です。伴奏部の装飾音は、微細ながらも存在感のあるコロコロとした音色も巧みです。冬の静かな炉端でや固定楽想(イデ・フィクス)は、奥ゆかしいクレシェンドとノンレガートのデクレシェンドが交互に揺らぎ、一つ一つの技巧がハイブリッドに昇華されています。ピアニスト泣かせで知られるノルマの回想の後半にある「戦いだ!」の箇所は安全運転以下のテンポで苦戦していて、さすがに役回りではないようです。しかし、初めから技巧的な狙いとその動機を必要としていない全体的な調和もあって、あまり違和感を感じません。
とかく美麗な音の保持とその技術に関しては、一かどのピアニストとしての評価があってよさそうです。このような「聴かせる」奏者が世界中にゴロゴロいて、かつ彼らが地道に活動を続けていることを想像すると、背筋がゾクゾクしてきます。
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