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Nojiri Takako


  Takako Nojiri Piano Recital「3人の物語」~Schumann Chopin Liszt

【邦訳タイトル】野尻多佳子ピアノ・リサイタル「3人の物語」
【演奏者・録音】野尻多佳子 2007年 
【カタログ番号】MITTENWALD MTWD99033(国内盤)
 1. アラベスク Op.18(シューマン)
 2. ソナタ ロ短調(リスト)
 3-6. ソナタ2番「葬送」(ショパン)
 7. コンソレーション3番(リスト)


 まずロ短調ソナタですが、国内盤には珍しく読譜が杜撰です。演奏も30分聞きとおすには厳しいものがあり、全体的な構成にやや難あり。急速部は細部が流され、無意味にテンポが揺れ、とかく音質の良さだけが目立ちます。ライナーノーツには「音の均質性」云々の説明書きがあり、調律にかなり拘っているようなのですが、それ以前にタッチの均質性に改善の余地がありそうです。コーダはスタミナ切れを起こしています。葬送ソナタもせっかくの旋律和声がスカスカで、プロの演奏としては気になる出来です。また、奏者自身が「ショパンの他の作品には見られない怒りや、むき出しの感情が現れている」と解説しているように、ほとばしるような感情表現を凛と支える強靭なメカニックが欲しいところ。なんらかの個性的なスタイルを担保することもなく、アーティキュレーション上の工夫も中途半端で、全体的に垢抜けません。アラベスクコンソレーションは前の2曲のソナタにおける緩除部分での印象と同様に、歯切れ悪く、のっぺりと聞こえます。特にコンソレーションは早めのテンポがズルズルと引きずられていて、だらしない響きになっています。コンセプトと選曲の兼ね合いも今一つです。

 




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