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Nakamichi Yuko


  semplice - Yuko Nakamichi 

【邦訳タイトル】センプリーチェ
【演奏者・録音】仲道祐子 1996年
【カタログ番号】Victor VICC-197(国内盤)
 
 1. 子供の情景 見知らぬ国から(シューマン)
 2. 子供の情景 不思議なお話(シューマン)
 3. 子供の情景 鬼ごっこ(シューマン)
 4. 子供の情景 おねだり(シューマン)
 5. 子供の情景 大満足(シューマン)
 6. 子供の情景 大事件(シューマン)
 7. 子供の情景 トロイメライ(シューマン)
 8. 子供の情景 炉端で(シューマン)
 9. 子供の情景 木馬の騎士(シューマン)
 10. 子供の情景 むきになって(シューマン)
 11. 子供の情景 おどかし(シューマン)
 12. 子供の情景 こどもは眠る(シューマン)
 13. 子供の情景 詩人のお話(シューマン)
 14. 「我は主の名を呼ぶ」 BWV.639(バッハ=ブゾーニ)
 15~25. ソナタ ロ短調(リスト)
 26. 愛の夢3番(リスト)


 奏者は96年の5月よりソロ活動をはじめ、このアルバムは同年11月に録音されたデビュー録音です。姉である仲道郁代の存在が大きいためか、あまり名前を聞く機会はないかもしれません。
 子供の情景は全曲を通して密やかに弾ききっており、躍動的な動機付けなどにはあまり積極的ではない様子。スタッカートの揃え方、可憐なウナコルダをはじめ、美観に一切の隙がありませんが、逆に音色の点で金太郎飴的な感触は否めないでしょう。我は主の名を呼ぶも淡々とした色彩で統一していますが、厳かな曲調に凛と栄えるメロディラインの押し上げが欲しいところ。ただ、「センプリーチェ(=単純に、素朴に)」という意味で言えば、目論見通りなのかもしれません。
 一転して、リストのソナタでは広いレンジをとっています。音色に対する志向性は基本的に変わりませんが、リストの作品に必要なダイナミクスを仕込んでいます。主題部での膨らみ豊かなルバート、また、コーダへと向かうオクターブの唸り上げも十分。遅めのテンポを貫いて堅調に録音されたソナタとしては、高い完成度を感じさせるものです。最後を締めくくる愛の夢は自由な詩情に溢れており、奏者の磐石な基礎力のをうかがわせます。

 




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