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Joseph Moog


  metamorphose(n) - Joseph moog 

【邦訳タイトル】変容
【演奏者・録音】ヨーゼフ・モーク 2008年
【カタログ番号】claves 50-2905 (輸入盤)
 
 1.「ノルマ」の回想(ベルリーニ=リスト)
 2.「ジャワ組曲」第3部 8番 ボイテンゾルグの庭園(ゴドフスキ)
 3. ワルツ「春の声」(J.シュトラウス=フリードマン)
 4. 白鳥(サン・サーンス=ゴドフスキ)
 5. ソナチネ6番「カルメン幻想曲」(ビゼー=ブゾーニ)
 6. 子犬のワルツ(ショパン=ゴドフスキ)
 7.「タンホイザー」のヴェーヌスベルクでの饗宴のパラフレーズ(ワーグナー=モシュコフスキ)


 編曲集として偏りのないプログラムです。ジャワ組曲からのセレクションはお決まりの「ボイテンゾルグの庭園」という点は嘆かれますが、モシュコフスキの選曲は特に素晴らしいです。
 ジャケットが全てを物語るかのように、演奏内容は華麗で瑞々しい印象です。メロディラインのバランスも良く、汎用な味わいがあります。テヌートやマルカートのツボを抑えた軽やかなタッチ、驚異的な粒揃いなどは今や超絶技巧で難曲をさばくピアニストの"デファクトスタンダード"でしょうか。このレベルが当たり前になってしまうと、奏者の「選曲格差」はますます拡がりそうです。
 ノルマの回想は17分かけていますが、リズムの折り返しや同音連打をはじめとした敏捷性に優れています。アーティキュレーションも細部にわたって工夫されていますが、全体としてはフォーマルな仕上がりです。春の声は大胆なテンポの揺らぎが少なく、装飾的な音符も生真面目に処理するので、やや聴き疲れします。白鳥もありがちな1本調子です。ヴェーヌスベルクでの饗宴はモシュコフスキらしいアイデアに溢れた編曲ですが、ダイナミックレンジの狭さやタッチやレガートの質的な変化の乏しさといった弱みを残しています。この作品は10年以上前に出た岡城千歳氏のワーグナー編曲集のアルバムを思い起こしますが、作品への創意という点での比較でもモークが特別な演奏をしているとは言い難いです。カルメン幻想曲は緩急がしっかりしていて堅調な仕上がりです。子犬のワルツも首尾よく小奇麗にまとまっています。

 




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