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Laurent Martin


  Franz Liszt : Latest works for piano - Laurent Martin

【邦訳タイトル】リスト:後期ピアノ作品集
【演奏者・録音】ローラン・マルタン 1992年
【カタログ番号】Ligi Digital Lidi 0103014-94(輸入盤)
 
 1. メフィスト・ワルツ2番(リスト)
 2. 忘れられたワルツ2番(リスト)
 3. 調性のないバガテル S.216a(リスト)
 4. 即興曲 S.191(リスト)
 5. 眠れぬ夜~問いと答え S203(リスト)
 6. 子守歌 S.198(リスト)
 7. ノクターン~夢の中で S.207(リスト)
 8. 灰色の雲 S.199(リスト)
 9. 不運(凶星!) S.208(リスト)
 10. ハンガリーの史的肖像4番 ラースロー・テレキ S.205-4(リスト)
 11. 悲しみのゴンドラⅡ S.200-2(リスト)
 12. 別れ S.251(リスト)
 13. R.W.~ヴェツィア S.201(リスト)
 14. リヒャルト・ワーグナーの墓に S.202(リスト)


 モニク・アースやピエール・サンカンに師事したマルタン。日本ではアルカン弾きとして知られていますが、その実力や功績についての評価はそれほど高くないようです。アルカン以外にも光の当たらない作曲家の普及に勤めています。
 今回はファツィオリ・ピアノによるリスト後期作品集。メフィストワルツ2番はアーティキュレーションに対する含蓄と才気が伺えます。鍵盤の裏側をくすぐって出すような弱音から、スタッカートで一気に膨らむ強奏まで、デュナーミクは広く用意されています。正面突破以外の奏法を模索中の人には大変有用な演奏でしょう。忘れられたワルツ2番も後半部の解決に不満を持つ人であればひとつの回答につながるのではないでしょうか。テンポに関する前後半での乖離が少なく、展開推移に無理がありません。装飾の和声処理も丁寧です。ハンガリーの史的肖像は唸りあげるような気迫に欠けますが、緩やかなクレシェンドの中に転げる微細な変化が伴っています。悲しみのゴンドラⅡ以降は、ほのかに立ち込める陰影コントラストがポイントです。ただし、曲順の理由からどうしてもモノクロームな雰囲気に引きずられていて、語り口もやや冗漫です。
 後期の作風を好む人にとって実演上のヒントがちりばめられた重要な録音かと思われますが、同時に、後期作品が大切に抱え込む色彩感にはどんな奏者も寄せ付けない閉塞感を感じます。

 




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