HEXAMÉRON - Oleg Marshev
【邦訳タイトル】ヘクサメロン
【演奏者・録音】オレグ・マルシェフ 1999年
【カタログ番号】Danacord DACOCD 530(輸入盤)
1. 巡礼の年第2年7番 ダンテを読んで~ソナタ風幻想曲(リスト)
2. 「コリントの包囲」お気に入りの動機によるメランジュ(ピクシス)
3. 「躍動する真珠」大ワルツ Op.211(エルツ)
4. 舟歌 Op.60(ショパン)
5. 「椿姫」による演奏会用大幻想曲 Op.78(タールベルク)
6. ロードの歌曲「思い出」による変奏曲 Op.33(チェルニー)
7-17. ヘクサメロン(リスト、タールベルク、ピクシス、エルツ、チェルニー、ショパン)

ヘクサメロンと、ヘクサメロン合作に関わった作曲家一人ひとりの作品を取り上げた企画盤です。「出る杭」を避けようとするような自制的な響きのため、どこか小粒足らんとする印象が強いマルシェフの演奏ですが、よく訓練された音列の美しさは隠れた実力者の証と言えそうです。
ダンテソナタは急速部でやたらとルバートを多用するので流れが悪いですが、基本的には優等生タイプの解釈です。「コリントの包囲」によるメランジュは軽快な変奏曲のような作りです。ただ、増音パターンはリストによる初期練習曲レベルで、現代の感覚で言えば習作の域を免れません。洒落っ気のあるエルツの真珠・大ワルツは、タイトルイメージによく重なるショパンのロンド調の作品で、無名が嘆かれます。ショパンの舟歌は女性的で波を見るような演奏。「椿姫」による大幻想曲はタールベルク色が全開で、低音の深みを活かしたオクターブ動機とフーガの導入は引きつけるものがあります。ロードの「思い出」による変奏曲は、各変奏とも大胆な仕掛けは一切ないものの、無数の装飾パターンをはじめ、チェルニーならではの技巧的引き出しの多さが魅力です。ヘクサメロンは3度やアラベスクのコーティングを重視しないリストの手技を補完する傑作と言えるでしょう。弾きにくい箇所が非常に多く、難易度は一般的に想像されているよりも遥かに高いのですが、マルシェフの端正な録音は一つの基準となりそうです。粒立ちの美しさだけでなく、オクターブ奏法も非常に安定しています。
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