サイトトップ> 演奏会とCDレヴュー > ルイ・ロルティ


Louis Lortie


  LISZT : Années de Pèlerinage, Italie - Louis Lortie

【邦訳タイトル】リスト:巡礼の年第2年<イタリア>
【演奏者・録音】ルイ・ロルティ 1990年
【カタログ番号】CHANDOS CHAN 8900(輸入盤)
 
 1. 巡礼の年第2年1番 婚礼(リスト)
 2. 巡礼の年第2年2番 物思いに沈む人(リスト)
 3. 巡礼の年第2年3番 サルヴァトール・ローザのカンツォネッタ(リスト)
 4. 巡礼の年第2年4番 ペトラルカのソネット47番(リスト)
 5. 巡礼の年第2年5番 ペトラルカのソネット104番(リスト)
 6. 巡礼の年第2年6番 ペトラルカのソネット123番(リスト)
 7. 巡礼の年第2年7番 ソナタ風幻想曲~ダンテを読んで(リスト)


 CHANDOSよりベートーヴェンやショパン、リスト、ラヴェルなどの録音を残している中堅ピアニスト。あまり目立つ存在ではありませんが、技巧水準の高さには定評があります。
 この一枚は清潔を決め込んでいて掴みどころがありません。類するところで言えばエル=バシャのような繊細さが特徴的ですが、コントロールが精緻というよりも、単純に太い音を出すことへの消極性によるところが大きいように感じます。また、タッチの瞬間よりも減衰過程に関心が寄せられていることで、芯のある音が鳴っていません。ペトラルカのソネットのようにメロディラインが明確に独立している作品においても、撫でて透かしていくようなタッチの割合が多く、音色表現の乏しさを滲ませます。起伏表現も意外と淡白で、全体として躍動感に恵まれません。唯一、ダンテソナタは主題後半から適度な力みが入っており、望遠的ながらもインパクトのあるフォルティシモに救われています。
 控えめで当たり障りのない演奏は、中長期的に自然淘汰されます。一曲一曲のパレットを変えずに予定調和で塗りつぶしても、聴衆に訴える力は限られることでしょう。リストには造詣の深いロルティですが、オールラウンダーが陥りやすい罠にはまっています。



  LISZT Live Volume1 - Louis Lortie

【邦訳タイトル】リスト ライヴ 1巻
【演奏者・録音】ルイ・ロルティ 1986-1992年
【カタログ番号】Port-Royal PR2206-2(輸入盤)
 1. ハンガリー狂詩曲3番(リスト)ロルティ1992
 2. ハンガリー狂詩曲9番「ペストの謝肉祭」(リスト)ロルティ1992
 3. 巡礼の年第2年補遺1番 ゴンドラを漕ぐ女(リスト)ロルティ1992
 4. 巡礼の年第2年補遺2番 カンツォーネ(リスト)ロルティ1992
 5. 巡礼の年第2年補遺3番 タランテラ(リスト)ロルティ1992
 6. 忘れられたワルツ1番(リスト)ロルティ1990
 7. 忘れられたワルツ2番(リスト)ロルティ1990
 8. 超絶技巧練習曲5番「鬼火」(リスト)ロルティ1986
 9. 「ファウスト」よりワルツ S.407(グノー=リスト)ロルティ1990


 普段は微熱的な解釈で一貫しているロルティにはないボルテージの高さです。勢いが付いたオクターブ連打、広範囲での跳躍など、スタジオ録音では感じ取ることのできない興奮が直に伝わってきます。メカニックの精度は揺ぎ無いものかと思われましたが、やはりライヴでは多少粗くなるようです。丁寧なアプローチも限定的で、そっけなく弾き流す箇所が散見されます。
 とはいえ、ハンガリー狂詩曲9番、タランテラ、ファウストワルツなど大振りな作品のいずれににしても至近のフォルテ以外は全て虚弱的で、いつもの弱音や繊細なタッチを堅持しています。個人的にはブリリアントな表現がもう少し押し出されてもいいと感じるのですが、エレガントさを売りにした美感に関する方針は不動のようです。また、忘れられたワルツ2番は大きな強弱の流れや拍を守るためのアクセントがきっちりと意識されていて、より一層堅実な印象です。スモークのかかったような音響も好ましい雰囲気を作り出しています。鬼火もタイトルにふさわしい不均一な音色の舞踏を見るようで、完成度は随一と見るべきでしょう。
 ライブ録音としては優等生タイプの域を出るものとは言いがたいですが、ロルティのどのスタジオ録音よりも刺激的で、聴き応えがあります。こうした音源を聞くと、世に流通するライヴ音源の少なさが嘆かれます。




Copyright 2006 LISZT-STYLE