LISZT : Piano works "La campanella"
【邦訳タイトル】リスト:ピアノ作品集"ラ・カンパネラ"
【演奏者・録音】小山実稚恵 1995年
【カタログ番号】SONY SRCR 9883 (国内盤)
1. パガニーニ大練習曲3番「ラ・カンパネラ」(リスト)
2. 巡礼の年第3年4番 エステ荘の噴水(リスト)
3. 巡礼の年第2年5番 ペトラルカのソネット104番(リスト)
4. ウィーンの夜会6番(第1版)(シューベルト=リスト)
5. 超絶技巧練習曲11番「夕べの調べ」(リスト)
6. 忘れられたワルツ1番(リスト)
7. ハンガリー狂詩曲2番(リスト)
8. ノクターン~夢の中で S.207(リスト)
9. 超絶技巧練習曲5番「鬼火」(リスト)
10. メフィスト・ワルツ1番(リスト)

ラフマニノフ、ショパンなどを中心に古典から近現代まで幅広いレパートリーを持つ、日本を代表する女性ピアニストです。近年も長期に渡るコンサートシリーズで活躍しています。
このリスト選に関して言えばいつもの闊達さよりも弱々しさが目立ち、拍子抜けの印象です。特にダイナミズムへの感度に違和感を感じます。具体的に言うと、弱音部がひたすら単色で、放っておくと眠ってしまう、そんな線の細さが気になります。同時に、p-f間の膨らみ(特にクレシェンド)がないことで全体的に痩せている作品が多く、トラック6あたりまでは各曲とも存在感に欠ける厳しい出来です。たとえばペトラルカのソネットにおける後半のア・テンポの箇所や、ウィーンの夜会の最後を飾るドルチェシモ部などで駆使される過剰なデクレシェンドなど、不可解な沈滞を引き起こす場面が散見され、そのたびに音楽的な腰が折れています。和声の局所的な偏愛やリズム的な細工など、なんらかのケレン味を出したのであれば、色々とカバーできたのでしょう。それでなければ、リスト的な"間"に対する持続的な緊張が欲しいところです。一方で、f-ffを基調として進行する夕べの調べの後半や、ハンガリー狂詩曲2番のフリスカ、メフィストワルツの前半などは持ち前の軽快さで盛り上がります。繊細な演出よりも、大胆な演出の方がよりストレートに音楽性が伝わってきます。
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