In Memory of Terence Judd 
【邦訳タイトル】テレンス・ジャッドの思い出
【演奏者・録音】テレンス・ジャッド 1978年
【カタログ番号】CHANDOS CHAN 9914(輸入盤)
1. 巡礼の年第4年 エステ荘の噴水(リスト)
2. 巡礼の年第2年補遺1番 ゴンドラを漕ぐ女(リスト)
3. 巡礼の年第2年補遺2番 カンツォーネ(リスト)
4. 巡礼の年第2年補遺3番 タランテラ(リスト)(トラックマークミスで中間部で分離)
5-7. ソナタ1番 1~4楽(ヒナステラ)
8-12. ソナタ Op.26 1~4楽章(バーバー)
13. 24の前奏曲とフーガ Op.87-15(ショスタコーヴィチ)
14. イスラメイ(バラキレフ)
15. 鏡3番 悲しい鳥(ラヴェル)

「近現代ものならテレンス・ジャッド」。そんな呼び声とともに、今頃は巨匠として…。夭逝悔やまれるイギリスの若き精鋭。本盤は1978年チャイコフスキー・コンクールのライヴ録音集です。
ヒナステラのソナタ、バーバーのソナタ、ショスタコーヴィチの前奏曲とフーガは、リヒテルの気迫とテンポ、ベルマンのダイナミズムとうねり、ギレリスの硬質な打鍵とキレなど、ロシアンピアニズムのいいとこ取りをしたような名演揃いです。技術的な点でも、無造作に錯綜する和音群やユニゾンをいともシームレスに処理していく様は、一度挑戦したものならば誰もが唖然とする美しさと言えるでしょう。明晰なリズムや小回りの利く波状強弱を駆使して作品の全体像に迫っており、近現代に特有の縁遠さを感じさせません。加えて、しっかりと演奏難度を顕示しながら、品格を湛えていることも特筆すべき点です。集中力の途切れによるものか、要所での凡ミスは多めです。しかし、エステ荘の噴水やタランテラなどいずれの作品も大局がよくつかまれていて、全体としての安定感には欠きません。腕っ節に自信のあるピアニストたちの重要レパートリーであるイスラメイは、凄みのある近現代の作品に囲まれているためか目立っていませんが、これも細部の仕込みにまで技が光る良演です。 一般的なヴィルトオーゾの枠にはとても収まり切らない才気をふんだんに漂わせています。
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