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Ikariyama Noriko


  LA CAMPANELLA - Liszt・Nishimura・Paganini

【邦訳タイトル】ラ・カンパネラ~リスト、西村、パガニーニ
【演奏者・録音】碇山典子 2006年
【カタログ番号】CAMERATA CMCD-28123(国内盤)
 1. パガニーニの「鐘」による華麗な大幻想曲 S.420(リスト)
 2. 神秘の鐘1番 薄明光(西村朗)
 3. 神秘の鐘2番 間奏曲(西村朗)
 4. 神秘の鐘3番 霧の河(西村朗)
 5. パガニーニ大練習曲3番「ラ・カンパネラ」(リスト)
 6. ヴァイオリン協奏曲4番 3楽章による優美なロンド(パガニーニ=西村朗)
 7. ヴァイオリン協奏曲5番 3楽章によるロンド(パガニーニ=西村朗)


 目玉は「鐘」による華麗な大幻想曲。リストは他の作曲家と比べて、テンポに関して驚くべき演奏効果に対するレバレッジがかかっていますが、当盤ははじめから勝負する気のない「練習中」の演奏です。「やっぱり楽曲そのものが悪い」という評価を一般化させられてはたまりません。マジックをゆっくりタネがわかるように見せても全く価値が出ないのと同じで、一つ一つの書法は極めて単純であっても、総体として何か凄いことが起きていると錯覚させるのがヴィルトオーゾの仕事です。「私はヴィルトオーゾタイプの演奏には魅力を感じません」と言い放つような完璧主義&義務的なパフォーマンス。タッチの質やオクターブ奏法は洗練されているのですが…それほどテンポを落としてまで装飾音を綺麗に入れたいものでしょうか。西村氏の作品の楽曲は精神不安を引き起こしそうな不協和音の連続。このCDのために作曲家され、タイトルのとおり「鐘」がテーマの3曲らしいですが、解説を見ながら聴いてもピンときません。聴衆が西村氏の楽曲を聴いて何を感じると西村氏は喜ぶのか、そんな現実的なことばかりが気になります。パガニーニ大練習曲3番も柔軟性がなく、特にアゴーギクへの意識が弱いです。パガニーニのロンド2作品は割と原曲に忠実なソロ用の編曲です。これも正確性への執心ばかりが目立って優美さや軽快さに欠けますが、ロンドという性格は奏者向きかもしれません。

 




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