HIBIKI TAMURA Debut Album
【邦訳タイトル】田村響 デビューアルバム
【演奏者・録音】田村響 2003年
【カタログ番号】Accustika PPCA-602(国内盤)
1. ソナタ44番(ハイドン)
2-5. 幻想曲 「スコットランドソナタ」1~3楽章(メンデルスゾーン)
6-7. BACHの主題による幻想曲とフーガ S529/1(リスト)
8-9. ソナタ 「1905年10月1日、街頭から」(ヤナーチェク)
10. 交響的変容「こうもり」(J.シュトラウス=ゴドフスキ)

精緻なタッチ、巧みに抑制されるピアニッシモ、滑らかなリズムの揺らぎ、自然なポリフォニー、どれをとっても高校生(当時)とは思えないレベルです。国内における多くのピアノ指導者が泣いて喜びそうなピアノ奏法の境地に達しています。
ハイドンのソナタ、スコットランドソナタはどちらも大人しく、音色も曇りがちです。あえてチャンネルを減らしてモノクロの表現にこだわっているような感覚でしょうか。BACHの幻想曲とフーガのオクターブ奏法はムラがなく、どっしりと腰の据わった重厚感があります。ヤナーチェクのソナタは、陰鬱な「気まぐれさ」や意気揚々とした「生真面目さ」が上手く絡み合っています。しかし、難曲こうもりまでを聞いて、アルバム全体を通してひとつの疑問点が浮かんできます。それはいわば「小・中学生のうちから厚化粧するのはどうなの?」というような疑問です。アーティキュレーションの過多、「計算づくめ」の窮屈さ、現実感のない理想で凝り固まっているように聴こえます。どんなピアニストでもいずれ否が応でも化粧をしなくてはならない時が来るのですが、それまでの過程で期待する部分がゴッソリ抜き取られたような、なんとも洗練されすぎたアプローチです。若い頃にしかできない上機嫌な音楽、そういうものを期待する意味では、全く娯楽的な要素がないと言えます。
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