LISZT : Années de Pèlerinage, Italie - Kemal Gekic
【邦訳タイトル】リスト:巡礼の年第2年 <イタリア>
【演奏者・録音】ケマル・ゲキチ 1999年
【カタログ番号】PALEXA CD-0520(輸入盤)
1. 巡礼の年第2年1番 婚礼(リスト)
2. 巡礼の年第2年2番 物思いに沈む人(リスト)
3. 巡礼の年第2年3番 サルヴァトール・ローザのカンツォネッタ(リスト)
4. 巡礼の年第2年4番 ペトラルカのソネット47番(リスト)
5. 巡礼の年第2年5番 ペトラルカのソネット104番(リスト)
6. 巡礼の年第2年6番 ペトラルカのソネット123番(リスト)
7. 巡礼の年第2年7番 ソナタ風幻想曲~ダンテを読んで(リスト)

ウィリアムスタウン、チェイピンホールでのライヴ録音です。ゲキチはここ数年で急速に自己の演奏スタイルを固めてきているように思いますが、この録音はその発展途上的な雰囲気が前面に出ています。言い方を変えると、完全に「実験段階」に留まっている演奏で、「やってみたいことが色々あるのですが、とりあえずこれを試してみました」という、まるで掴みどころのない作為的な響きで充満しています。
最も鼻につくのがアクの強い内声の浮き出し方。目立たせたい音はいやが応にも伝わってくるのですが、あまりに独立しすぎて元のテクストとの関係性を失っています。また、各パッセージにおける急激な展開が、全体の構成を無視する箇所が散見されます。特にダンテソナタではひたすら意外性の追求に走っているかのようで、意図の不明確なテンポ、強弱変化がよそよそしく感じられます。1番の婚礼のように、末節に注意しすぎて母体となる「本流」を失う結果になっている曲もあります。こうなってくると、シプリアン・カツァリスを引き合いに出したくなります。
もちろんピアニストとしての個性が強烈にアピールされていて、シフラ節ならぬ「ゲキチ節」という表現が出来るかもしれませんが、美観を損ねるまでの主張は往々にして共感を得られないものです。
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