LISZT : Piano works - Marylin Frascone
【邦訳タイトル】リストの詩情、リストの技巧
【演奏者・録音】マリラン・フラスコーヌ 2006年
【カタログ番号】TRANSART TRM149(輸入盤)
1. 巡礼の年第2年7番 ソナタ風幻想曲~ダンテを読んで(リスト)
2. 巡礼の年第1年2番 ヴァレンシュタットの湖畔で(リスト)
3. 詩的で宗教的な調べ7番 葬送曲(リスト)
4. ノクターン~夢の中で(リスト)
5. 2つの演奏会用練習曲1番 森のざわめき(リスト)
6. 2つの演奏会用練習曲2番 小人の踊り(リスト)
7. 灰色の雲 S.199(リスト)
8. 死の舞踏 S.555(リスト)
9. 「レクイエム」による2つのトランスクリプション2番 涙の日 S.550-2(モーツァルト=リスト)

2008年のフラヌリ夏季音楽祭におけるライヴ録音です。雑然としたプログラムですが、解説には"リストの生涯における50年間に渡る作品を取り上げることで、リストの人物像に迫る一枚と言える…"というコンセプトとのようです。
ダンテソナタはフレーズの立ち上がりに必ずルバートをかけるのが気になります。近年の解釈にありがちな典型的間延びと言えるでしょう。ヴァレンシュタットの湖畔は終結部の伴奏声部をほんのりと強調していて意外性があります。葬送曲は序盤から低音をグイグイ鳴らし、中間部からの右手メロディラインにしっかりと喰い付かせるような様子が魅力的です。後期作品はテンポを緩め過ぎると作品が持つ不完全さが十分に表現できないのですが、その点、少し早めのテンポを採用している夢の中で、灰色の雲は本来の姿を顕かにしているように思われます。森のざわめきは「歌い過ぎ」のため全体的に失速していて、細かい粒の音列美がなく、小人の踊りも高速展開部の音が流れ気味で、ムーディな処理が目立ちます。死の舞踏はダイナミックな息遣いが堂々たるものですが、どこか悠長で冷徹さに乏しく、デモニッシュな面を引き出せていません。涙の日もいま少し無慈悲なタッチを要望したいところ。どの作品も主旋律の動きを最優先にしているようです。
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