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Francois-Rene Duchable



  CHOPIN, LISZT, BERLIOZ, DUKAS, SAINT-SAENS

【邦訳タイトル】ショパン、リスト、ベルリオーズ、デュカス、サン・サーンス
【演奏者・録音】フランソワ=ルネ・デュシャーブル 1974-1979年
【カタログ番号】EMI 7243 5 72356 2 4(輸入盤)
 DISC1 ――――――――――――――――――――――――――
 1. スケルツォ1番(ショパン)デュシャーブル1974
 2. スケルツォ2番(ショパン)デュシャーブル1974
 3. スケルツォ3番(ショパン)デュシャーブル1974
 4. スケルツォ4番(ショパン)デュシャーブル1974
 5. 幻想曲(ショパン)デュシャーブル1974
 6. 超絶技巧練習曲5番「鬼火」(リスト)デュシャーブル1974
 7. 巡礼の年第2年5番 ペトラルカのソネット104番(リスト)デュシャーブル1974
 8. パガニーニ大練習曲3番「ラ・カンパネラ」(リスト)デュシャーブル1974
 9. 愛の夢3番(リスト)デュシャーブル1974
 10. ポロネーズ2番(リスト)デュシャーブル1974
 DISC2 ――――――――――――――――――――――――――
 1. メフィストワルツ1番(リスト)デュシャーブル1974
 2. 超絶技巧練習曲10番(リスト)デュシャーブル1974
 3. コンソレーション3番(リスト)デュシャーブル1974
 4. 詩的で宗教的な調べ7番 葬送曲(リスト)デュシャーブル1974
 5-9. 幻想交響曲 1~5楽章(ベルリオーズ=リスト)デュシャーブル1979
 DISC3 ――――――――――――――――――――――――――
 1-4. ソナタ 1~4楽章(デュカス)デュシャーブル1978
 5. ワルツ形式の練習曲 Op.52-6(サン・サーンス)デュシャーブル1979
 6-11. 練習曲 Op.111 1~6番(サン・サーンス)デュシャーブル1979
 12. アレグロ・アパッショナート(サン・サーンス)デュシャーブル1979
 13. マズルカ3番 Op.66(サン・サーンス)デュシャーブル1979


 70年代のデュシャーブル。CD1に収録されたショパン(スケルツォ集幻想曲)がまるで別人の演奏です。80年代以降のショパンと比較すると、多くの人が「これがデュシャーブル?」と疑問を感じて演奏クレジットを見直すことでしょう。一つずつ確かめるような音運びと抑制されたテンポを意味づける緻密なアーティキュレーションに驚かされます。リストの超絶技巧練習曲5番、10番も、98年の全曲録音とはスタンスが違います。幻想交響曲は各楽章の楽想がよく引き出され、また、デュシャーブルらしいキレのある演奏ということもあり、現状で最高の録音と思われます。CD3は別盤のサン・サーンス集、デュカス集より抜粋。サン・サーンスは技巧派の作曲家らしい遊び心が現れています。ワルツ形式の練習曲は、主観的に聞かせる拳たっぷりのシフラの録音と好対照です。圧巻はデュカスのソナタです。フランクを彷彿とさせる、足跡を多重に残していくように厳かに推移する和声と、冷徹に静観するようなタッチとの相性が抜群です。
 普段はエース的な存在であるメフィストワルツカンパネラといったリストの諸作品はかなり影を薄くしています。もちろんこれらもクールにまとまった文句なしの仕上がりなのですが、奏者のテンションの違いを感じずにはいられません。これを単純な気分屋としての2面性ととらえるべきなのか、計算された所業なのか、複雑な気持ちです。



  LISZT : Transcriptions & Paraphrases - Francois-Rene Duchable

【邦訳タイトル】リスト:トランスクリプションズとパラフレーズ
【演奏者・録音】フランソワ=ルネ・デュシャーブル 1994年
【カタログ番号】EMI 7243 5 55382 2 2(輸入盤)
 1. 「ドン・ジョバンニ」の回想 S.418(モーツァルト=リスト)
 2. 「リゴレット」のパラフレーズ S.434(ヴェルディ=リスト)
 3. 「トロヴァトーレ」よりミゼレーレ S.433(ヴェルディ=リスト)
 4. 「アイーダ」より神前の踊りと終幕の二重唱 S.436(ヴェルディ=リスト)
 5. 「シモン・ボッカネグラ」の回想 S.438(ヴェルディ=リスト)
 6. 「ドン・カルロス」~祭典の合唱と葬送行進曲 S.435(ヴェルディ=リスト)
 7. 音楽の夜会9番 ダンス S.424-9(ロッシーニ=リスト)
 8. 「ウィリアム・テル」序曲 S.552(ロッシーニ=リスト)


 鬼才カツァリスが尊敬しているというデュシャーブル。技巧派としての本領発揮の一枚です。
 ドン・ジョバンニの回想ではスタッカートの妙技、鋭敏な指裁き、また、ウィリアム・テル序曲では滑らかな急速移動に閉口してしまいます。技巧的に安定しているということだけでは真先に酷評の対象になるような昨今においても、デュシャーブルは例外なのでしょう。特に少し早めの離脱による軽い打鍵は、音が多いオペラ編曲ものに対して理に適っています。デュシャーブルと言えば超絶技巧練習曲の一枚でもかなりの軽やかさを披露していますが、より一層の技量的余裕を見せ付けます。
 全体的にスケールの大きいフレージングと、息長く疾走感を維持することに専念しているためか、あまり細かなアーティキュレーションは見られません。しばしば超絶的な演奏に期待される爆音やスリルとも縁が薄いので、重厚感や緊張感という意味では好みがわかれることでしょう。あらゆる難しいパッセージにおいて安定性が保たれているという点や、アムラン、カツァリスのように大規模な跳躍で芝居がかったリ、安全運転になることもなく、純粋メカニックへの敬意を感じます。余計な思索を排し、キリっとした輪郭が栄えるシャープな演奏。手段に困らない職人芸です。

 




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