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Nikolai Demidenko



  Demidenko live at Wigmore Hall - Nikolai Demidenko

【邦訳タイトル】ライヴアットウィグモアホール
【演奏者・録音】ニコライ・デミジェンコ 1993年録音
【カタログ番号】Hyperion CDD22024 (輸入盤)   
 DISC1 ―――――――――――――――――――――――――― 
 1-2. 幻想曲 Op.12(ヴォルジーシェク)
 3. 変奏曲 Hob ⅩⅦ:6 (ハイドン)
 4. ソナタ Kk.11(スカルラッティ)
 5. ソナタ Kk.377(スカルラッティ)
 6. ソナタ3番 3楽章(クララ・ヴィークの主題による変奏曲)(シューマン)
 7. 幻想曲 Op.28 「スコットランド幻想曲」(メンデルスゾーン)
 8. ノクターン Op.129(カルクブレンナー)
 DISC2 ――――――――――――――――――――――――――
 1. 「遥かなる恋人に寄す」1番 丘の上に腰を下ろし S.469/1(ベートーヴェン=リスト)
 2. 「遥かなる恋人に寄す」2番 山々の青いところ S.469/2(ベートーヴェン=リスト)
 3. 「遥かなる恋人に寄す」3番 空高く軽やかに舞う鳥 S.469/3(ベートーヴェン=リスト)
 4. 「遥かなる恋人に寄す」4番 空高く流れゆく S.469/4(ベートーヴェン=リスト)
 5. 「遥かなる恋人に寄す」5番 五月めぐりきて S.469/5(ベートーヴェン=リスト)
 6. 「遥かなる恋人に寄す」6番 お別れにこの歌を受け取って S.469/6(ベートーヴェン=リスト)
 7. ソナタ Op.1(ベルク)
 8-9. プレリュードとフーガ BuxWV140(ブクステフーデ=プロコフィエフ)
 10. シャコンヌ(グバイドゥーリナ)
 11. 詩的で宗教的な調べ7番 葬送曲(リスト)
 12. 即興曲 Op.90-4(シューベルト)


 19世紀のロマン派作品を中心に、スカルラッティからグバイドゥーリナまで扱った連続6回のリサイタルから抜粋された録音を集めた2枚組みです。
 手の絡まり、ペダルの濁りなど不鮮明になる部分がかなりありますが、ドラマティズムを優先した流麗なフォルム、デュナーミクとアゴーギクのバランスのよさが七難を隠します。ヴォルジーシェクの幻想曲は躍動感に溢れた2楽章が魅力です。ハイドンはやや音列のムラが目立ちます。クララの変奏曲での伸びやかな歌は、まさにセンスの塊といった印象ですが、一番の聞きどころはメンデルスゾーンのスコットランド幻想曲でしょう。ホールの臨場感も相乗し、他の録音にはない激情的な響きを味わうことができます。カルクブレンナーのノクターンはとびきりマイナーな作品で、甘たるい3度の和声とアルペジオ伴奏が特徴です。ベートーヴェン=リストの歌曲編曲は、全般的に表現がくぐもっていて、もう少しずつ明るい色彩を取り入れてほしいところ。グバイドゥーリナのシャコンヌは奏者の唸り声が加わった力演です。ベルクのソナタも同様ですが、アクセントとしてのエネルギッシュなオクターブ奏法に支えられ、見通しのよい仕上がりになっています。ブクステフーデ=プロコフィエフのプレリュードとフーガも、先のカルクブレンナーばりに知名度が低いですが、割と即興的でありながら、バッハの作風と比べるとより静謐な感じを受ける面白い作品です。曲順のせいか、デミジェンコにしては葬送曲が地味に聴こえます。シューベルトの即興曲は反復音型が急速で直線的。リヒテルが思い出されます。全般的にピアニッシモがよく栄える録音です。デミジェンコファンにとっては必携のアルバムでしょう。

 




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