サイトトップ> 演奏会とCDレヴュー > クリフォード・カーゾン


Clifford Curzon



  LISZT:SONATA IN B MINOR etc. - Clifford Curzon

【邦訳タイトル】リスト:ソナタロ短調、愛の夢3番、子守歌他 
【演奏者・録音】クリフォード・カーゾン 1963-71年録音
【カタログ番号】DECCA UCCD-7142(国内盤)  
 1-3. ソナタ ロ短調(リスト)カーゾン1963
 4. 愛の夢3番(リスト)カーゾン1963
 5. 忘れられたワルツ1番(リスト)カーゾン1963
 6. 2つの演奏会用練習曲2番 小人の踊り(リスト)カーゾン1963
 7. 子守歌 S174(リスト)カーゾン1963
 8. 即興曲 Op.142-2(シューベルト)カーゾン1971


 ロ短調ソナタは、淡い光沢を湛えた神々しい粒が随所に散りばめられているような演奏です。ピアノ本来の質素な響きを殺さないペダルコントロール。独白に近いような淡々としたニュアンスが高尚な感覚を引き出します。愛の夢忘れられたワルツでは独立した左右の歌い分けがポイント。最終トラックのシューベルトで見せる、どこか物憂げな情景が浮かぶ和声感も見事です。しかし、そうした質的配慮の高さゆえに、フレーム上の精度的なムラ、たとえば不均一性やミスタッチ、ぎこちないリズムパターンが多いのは目につきます。質感と機能性の均衡バランスによって乗数的に芸術性が高まるとすれば、すなわち、カーゾンのそれは理にかなわないのでしょう。まるで包み紙が萎びているせいで、中身まで無残に傷んだ高級菓子のようです。
 技巧水準にフィルターをかけながら耳を澄ます行為には特別な価値を感じません。質的側面を犠牲にすることなく、機能性を格段に高めた新気鋭ピアニストが多く輩出される中、彼らの可能性を差し置いてカーゾンを高く評価する動機は「懐旧」や「郷愁」以外に見当たらないように思います。

 




Copyright 2006 LISZT-STYLE