サイトトップ> 演奏会とCDレヴュー > ナイダ・コール


Naida Cole



  reflections  Ravel, Bartók and Liszt -Naida Cole

【邦訳タイトル】リフレクションズ ラヴェル、バルトーク、リスト
【演奏者・録音】ナイダ・コール 2001年
【カタログ番号】DECCA UCCD-1088(国内盤) 
 1. 鏡1番 蛾(ラヴェル)
 2. 鏡2番 悲しい鳥(ラヴェル)
 3. 鏡3番 洋上の小舟(ラヴェル)
 4. 鏡4番 道化師の朝の歌(ラヴェル)
 5. 鏡5番 鐘の谷(ラヴェル)
 6-13. ハンガリー農民歌による8つの即興曲 1~8番(バルトーク)
 14. ソナタ ロ短調(リスト)


 若手の女性ピアニストとしては近年稀に見る大器。16部音符による音階的な要素では多少大味な部分も見せますが、鍵盤支配力の観点で言えば世界トップクラスの技術と見て間違いないでしょう。必要以上の作為的な抑揚を徹底的にそぎ落としたような演奏イメージは、同じくDECCAで活躍するジャン=イヴ・ティボーデのそれに近いように思います。
 は抑制されたピアニッシモや瞬発的なフォルテへの増幅が際立っています。悲しい鳥はもう少し低音の深みが欲しいところ。洋上の小舟はオスティナートへの高い集中力が感じられます。道化師の朝の歌はスタッカートに箔が付いており、輪郭が極めて鮮明です。恐るべき同音連打の回転率などは、無理難題を突きつける譜面を見事に再現しています。バルトークの即興曲では、メシアンなどの近現代作品にも注力するコールならではの持ち味が出ています。良くも悪くも、題材そのものに潜在するはずの体温が不協音程への偏執によってグロテスクにかき消されています。
 師匠であるレオン・フライシャー譲りの「豪快速」なロ短調ソナタは、普通のピアニストでは破綻してしまうようなテンポでアップダウンします。ミクロの部分で言えば、思わぬ強引な誘導に戸惑いも感じますが、多くの関心ごとは鋭角的に切り込んだ圧倒的なメカニックに平伏します。この演奏はピアノ黄金期や旧時代のテクニシャンには成し得なかった快挙と言えるのではないでしょうか。

 




Copyright 2006 LISZT-STYLE