サイトトップ> 演奏会とCDレヴュー > フレデリック・チュウ


Frederic Chiu



  LISZT : Années de Pèlerinage, Italie - Frederic Chiu

【邦訳タイトル】リスト:巡礼の年第2年<イタリア・ヴェネツィアとナポリ>
【演奏者・録音】フレデリック・チュウ 2000年
【カタログ番号】harmonia mundi HMU 907263(輸入盤)
 1. 巡礼の年第2年1番 婚礼(リスト)
 2. 巡礼の年第2年2番 物思いに沈む人(リスト)
 3. 巡礼の年第2年3番 サルヴァトール・ローザのカンツォネッタ(リスト)
 4. 巡礼の年第2年4番 ペトラルカのソネット47番(リスト)
 5. 巡礼の年第2年5番 ペトラルカのソネット104番(リスト)
 6. 巡礼の年第2年6番 ペトラルカのソネット123番(リスト)
 7. 巡礼の年第2年7番 ソナタ風幻想曲~ダンテを読んで(リスト)
 8. 巡礼の年第2年補遺1番 ゴンドラをこぐ女(リスト)
 9. 巡礼の年第2年補遺2番 カンツォーネ(リスト)
 10. 巡礼の年第2年補遺3番 タランテラ(リスト) 


 難曲に対して慎ましやかなマルカートの表現を好むヴィルトオーゾ型ピアニストとして認識していましたが、それ以上に、奏者の引き出しの多さが見て取れる録音です。
 婚礼の主題はスッキリとしていて壮観です。余計なタメを取り除いた左手オクターブは、流れるような美しさがあります。物思いに沈む人、サルヴァトールローザのカンツォネッタとも鍵盤が指に吸い込まれるようなしっとりとした演奏。ペトラルカのソネット3曲は微妙な脱力や些細なアゴーギクで上手くまとめられています。特に123番はノンレガートでの鍵盤裁きが冴えます。ダンテソナタでは、控えめな冒頭から一変、ミスタッチをものともしないオクターブ主題の急迫ぶりが圧巻です。後半は独特な解釈を織り込みつつ、繊細な感性をうかがわせる麗麗としたうねりに説得力が感じられます。ゴンドラをこぐ女もノンレガートの表現が効果的です。タランテラは奏者お約束の奏法が炸裂。符点音符やスタッカートも全て円やかなので、好みがはっきり別れると思いますが、首尾一貫して「角張らず、柔かすぎず、そして速く」。ミスタッチに加え、少なからず譜読み違いも散見されますが、十分な表現力の前にはあまり気になりません。

 




Copyright 2006 LISZT-STYLE