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Lazar Berman


  Lazar Berman plays Liszt & Rachmaninov

【邦訳タイトル】ラザール・ベルマン・プレイズ・リスト&ラフマニノフ
【演奏者・録音】ラザール・ベルマン 1976年
【カタログ番号】Istituto Discografico Italliano IDIS 6497/98(輸入盤)  
 DISC1 ――――――――――――――――――――――――――
 1-6. 楽興の時 Op.16 1~6番(ラフマニノフ)
 7-13. 超絶技巧練習曲 1~7番(リスト)
 DISC2 ――――――――――――――――――――――――――
 1-5. 超絶技巧練習曲 8~12番(リスト)
 6. 巡礼の年第2年5番 ペトラルカのソネット104番(リスト)
 7. 前奏曲 Op.23-5(ラフマニノフ)
 8. 巡礼の年第1年5番 嵐(リスト)  


 ベルマン死後、遺族の承諾を得て初出したミラノ・ライブ録音盤です。重量感に突き上げられた金属的なサウンドで誉れ高い1963年の超絶技巧練習曲全曲録音盤は相変わらず再販されない中、こういったライヴ音源の発掘は貴重と言えます。非常に読みやすい英語で書かれたライナーノーツは、マルコ・パシーニによるものです。
 ラフマニノフの楽興の時は圧倒的な包容力に象徴されます。単純な意味での強奏の迫力だけではなく、肥沃なタッチによる大胆なレガートやたっぷりとしたペダルなども、同じくロシア名匠であるリヒテルやギレリスと一線を画す特徴です。1番3番における絵画的なルバート、2、4、6番における開放性のある振幅、5番における反射光導く大海原のような音色も、近年よく聴かれる機密性重視のラフマニノフにない味わいがあります。超絶技巧練習曲では奏者の直感的かつ原始的な志向を垣間見ることができます。特にアップテンポな楽曲は猛々しさと雄大さを兼ね備え、「男のリスト」を強く感じさせます。ただ、先述した金字塔との比較で言えば傷が多すぎるのが気になるところ。12曲休憩なしで演奏されたので無理もないのですが、ラフマニノフと違って演奏上のリスクが露骨に出てしまっています。その後のペトラルカのソネット前奏曲Op.23-5は、まさにロマン派の啓示的な演奏です。最後のはスタミナの限界を突き抜けるアンコール。低音部がゴリゴリ唸っており、作品タイトルにこの上なくふさわしい様子です。
 全体としては、モノラルなのが残念です。また、嗜好品としての位置づけは重々承知しながらも、ミスタッチと和声の混濁が激しい点において、ベルマンであればもう一声!という渇望が抑えきれません。

 




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