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Pascal Amoyel


  Liszt : De Profundis - Amoyel / Antiphona Choir / Muleikal

【邦訳タイトル】≪深き淵より≫ リストのピアノ協奏曲とその原曲
【演奏者・録音】(※1)パスカル・アモイヤル 2001年録音 
       (※2)ロランダス・ムレイカ指揮 アンティフォナ合唱団 2001年録音
【カタログ番号】ogam 488016-2(輸入盤)
 1. (導入)鐘の音 ― ―
 2. グレゴリオ聖歌「怒りの日」 ― ※2
 3. 死の舞踏 S.555(リスト)※1 
 4. グレゴリオ聖歌「深き淵より」 ― ※2
 5. 詩的で宗教的な調べ4番 死者の追憶(リスト)※1
 6. パーテル・ノステル ― ※2
 7. 詩的で宗教的な調べ5番 主の祈り(リスト)※1
 8. ミゼレーレ ― ※2
 9. 詩的で宗教的な調べ8番 パレストリーナによるミゼレーレ(リスト)※1
 10. アヴェ・マリア ― ※2
 11. 詩的で宗教的な調べ2番 アヴェ・マリア(リスト)※1
 12. (間奏)鐘の音 ― ―
 13.  死の舞踏 S.525(サン・サーンス=リスト)※1


 他に類を見ない斬新な企画盤。 曲間に原曲を挟みこむ工夫により、リストがインスパイアされた素材とリストによる作品の対話が浮かび上がってきます。たとえば、単旋律だけで荘厳な響きを演出するトラック2に対し、和声展開、高音補強など広い音域を大胆に使用するS.555。発想、あるいは感性的な意味合いももちろんですが、ユニゾンの特質はそのまま活かすなどの手法的な面においても原曲への畏敬が感じられます。結果的に、原曲の音楽的「資質」と、「編曲」双方に対するオマージュのようなデザインになっていて、構成だけでかなり楽しめます。
 ただ、アモイヤルの演奏は癖があります。高速パッセージやオクターブ奏法は非常に安定していますが、妙に落ち着き払ったテンポや拍感などは失速感に繋がっています。また、美音に貪欲過ぎるためか、肝心の「怒り」や「死」があまり迫ってきません。「現代っ子のお上品なリスト」というか、粗い表現をとことん忌避する態度のせいで熱量がなく、乾いて聴こえてしまいます。録音に問題があるのかどうかはよくわかりませんが、リストには美音や作法にこだわりすぎると魅力が半減する曲が多いように思います。

 




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